「今日こそベースを弾こう」
そう思い立っても、実際に音を出すまでがなかなか遠い。アンプを引っ張り出して、ケーブルを繋いで、チューナーどこだっけ、メトロノームアプリ起動して……とやっているうちに、気づけば10分以上経っている。深夜ならヘッドホン環境も必要だし、もうこの時点でちょっと疲れてくる。
この「準備の手間」が、じわじわと練習のハードルを上げているんですよね。
仕事でへとへとになった日。ちょっとした隙間時間にベースを触りたいとき。準備という名の小さな壁が、「今日はいいか」を生み出してしまう。これが積み重なると、いつの間にかベースを触らない日が当たり前になっていく。
機材が悪いわけじゃない。腕のせいでもない。ただ、準備がちょっとだけ面倒なだけ。でも、そのちょっとが意外と大きかったりする。
というわけで、自分にとっての理想の練習環境ってなんだろう、と整理してみることにした。
まず欲しいのはメトロノーム。ベーシストたるもの、リズムトレーニングは避けて通れない。次に音源再生機能。やっぱり好きな曲に合わせて弾きたいじゃないですか。そしてチューナー。クリップチューナーで十分と思っていたけど、取り外しの手間や気付いたら紛失していて。。。ということが以前にあった。
これに加えて、ヘッドホンアンプとして使えること。深夜でも気兼ねなく練習できる環境はどうしても欲しい。
あと、お小遣い制のサラリーマンにとっては少しでも安いと嬉しい。。。高価な機材は「まず買うところ」がハードルになってしまう。
最後にコンパクトであり、持ち運びがしやすいこと。今の環境が少し特殊かもしれないが、自室はあるものの、家庭の状況によってリビングで練習することもある。
つまり、機能としてはメトロノーム、音源再生、チューナー、ヘッドホンアンプ。この4つがひとつにまとまった、安くてポータブルなやつ。そんな夢みたいなデバイス、あるのかな。
(もう一つ欲を言えば、演奏を録音して、聞き返せると嬉しい)
最初のエフェクターとしてマルチのZoom B2 fourを購入していたので、こちらを使用して練習を行っていた。
チューナー、メトロノーム(ドラムマシーン)、音源再生機能(有線)が搭載されており、練習する分には全く困らないものの、筐体のサイズが少し大きめ(高校生の男子のお弁当箱サイズぐらい?)で電源が必要(USBモバイルバッテリーに対応)のため、自室に据え置きとして練習していた。リビングで練習する際、電源を外して、もろもろのコードをまとめて。。。といったのが手間であったのと、ベース本体と楽譜とB2 fourと。。。と一度に手に抱えて移動するのもギリギリであった。また片付けも同様である。
いざ探し始めると、これが難しい。
理想は、VOX amPlug2のような、ジャックに挿して、スマホから全て操作ができるものだけど、なかなか安価なものには見つからなかった。
メトロノーム付きのチューナーならある。ヘッドホンアンプ付きのマルチエフェクターもある。でも、音源再生まで含めてコンパクトにまとまった製品となると、途端に選択肢がなくなる。
「じゃあ全部バラで揃えればいいじゃん」という声が聞こえてきそうだけど、それだと本末転倒なんですよね。機材が増えれば準備も増える。解決したかった問題がそのまま残っちゃう。
うーん、どこかで妥協するしかないのかな。そんなことを思いながら、だらだらとネットを徘徊する日々が続いた。
そんなある日、ふと目に留まったのがSONICAKE の Pocket Masterだった。
メトロノーム内蔵。スマホとBluetooth接続で音源再生OK。チューナーも入ってる。もちろんヘッドホンアンプとして使える。……あれ、全部揃ってない?
サイズは手のひらサイズで、お値段も一万円を切っている。なんだこれ、まさに探してたやつじゃないか。
正直、最初はちょっと疑ってた。こんなに機能詰め込んで、ちゃんと使えるの?という不安。でも調べてみると評判も悪くないし、この価格なら試してみてもいいかな、と。えいやで購入ボタンを押した。
届いて使ってみて、びっくりした。いや、大げさに言いすぎかもしれないけど、練習環境がガラッと変わったのは本当。
ベースにPocket Masterを繋いで、ヘッドホンを繋ぐ。以上。これだけで練習開始。準備時間、ものの数十秒。チューニングもその場でできる。スマホを繋げば好きな曲を流しながら弾けるし、メトロノームも設定可能。
バッテリー駆動で、1日1~2時間程度の練習であれば十分な稼働時間。
この手軽さ、ちょっと感動してしまった。
以前は「よし、練習するか」と気合いを入れる必要があったのに、今ではなんとなくベースを手に取れる。ソファでごろごろしてて、ふと「あ、弾こうかな」と思ったら、もう弾いてる。この気軽さが習慣化に直結した。練習頻度、明らかに上がりました。
もちろん、惜しい点もある。チューナーの反応がなかなか悪い。特に4弦開放については、若干時間がかかる。
あとジャック直刺しのヘッドホンアンプではなく、マルチエフェクターであるため、シールドで繋ぐ必要がある。そのため短いシールドも合わせて持ち歩く必要がある。
ベストではないにしろ、確実に練習の習慣化ができる仕組みづくりができたと思う。
まだ試せていけど、オーディオインターフェース搭載とのことなので、スマホと繋いでガレージバンドなどのDAW上で録音できるのではないかと思ってる。


ベーシストとして上達するのに必要なのは、高い機材じゃなくて、毎日の練習。当たり前のことなんだけど、これがなかなか難しい。で、練習を続けるために大事なのは、始めるハードルをとにかく下げること。
Pocket Masterは、自分にとってまさにそれをやってくれた。完璧な製品ではないけれど、練習の「面倒くささ」を取り除いてくれるという意味では、期待以上の働き者だった。
もし練習が続かないなーと悩んでいる人がいたら、機材のグレードより先に、練習環境の手軽さを見直してみてほしい。準備ゼロで始められる環境さえあれば、練習って意外と続くものですよ。
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